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11月30日(土)、NPO法人ホームスタート・ジャパン設立から15周年記念のフォーラムが開かれました。
タイトルは、【イマドキの子育てって?? どう応援する?! 】
東京・大手町の三井住友銀行東館SMBCホールの会場に約150人、全国各地の150ヶ所からオンラインで約250人、あわせて400人規模のイベントになりました。
ごご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
イベント開始前、全国各地のスキーム(ホームスタートの活動をしている地域団体)が続々とZoomに参加。その様子を中継リレーで紹介しました。
個人で自宅からオンライン参加することも、地域で集まって参加することもできるようにしました。
ホームスタート・ジャパンの森田圭子代表理事から開会あいさつの後、2組の親子が登壇。
隣には、その親子を訪問したボランティアの方も並びます。
1組目は、埼玉県越谷市から来ていただいた、双子のママとパパです。
『夫婦ともに1年間の育休を取得して育児がスタートしましたが、1日中家にこもっての育児で、夕方になると大泣きする双子をあやし、毎日同じことの繰り返しで閉塞感とか気分の落ち込みを感じていた』ときに、ホームスタートの訪問が始まりました。
そして、訪問を重ねるうちに、『気持ちが晴れて子どもの子どものことも褒めてくれて、私たちはちゃんと育てられてるんだなって実感することもできました。地域の育児支援情報を教えてもらったこともよかったです。それまで越谷に5年ほど住んでたんですけど、地域との関わりがなく、情報の集め方もわかりませんでした。地域とつながってることで受けられる恩恵がたくさんあることを知りました。今では越谷市の多胎サークルを立ち上げて、私も支える側として活動しています』というママのお話でした。
それに対して、ボランティアさんからひとこと。
『たまたま住んでいる地域も近いですし、子育て支援の団体に属しておりましたので、子育て支援のイベントとか、親子講座とか、子育て支援施設とかをお知らせすることができました。そうしたらすごく積極的にいろんな施設や支援などをご活用いただけて、私もお知らせしてとてもよかったなと思いました』
地域とつながる、良いきっかけになったのですね。
続いては、千葉県船橋市から来ていただいたママ。
上の子が2歳手前、下の子が0歳数ヶ月という時期で、家の中はてんやわんやという状態だったそうです。
そしてホームビジターの訪問が始まると、
『実際に来ていただいて、柔らかく、太陽のような温かみで支えてくださって、私の心がどんなに救われたか、大変助かりました。それで、回を重ねるにつれて、来ていただく日は、子どもたち以上に私が楽しみになっていました』
上の子にも下の子にも向き合う余裕ができ、いろいろな遊び方を教えてもらって子どもは大興奮、近所の付き合いがない地域でも『優しい方が近くにいると思うと、子育てをこれからこの土地でやっていくことにすごく安心』できたということです。
さらにもう1組、大阪府高槻市からも、利用した親子とホームビジターさんがオンラインで参加してくれました。
長男が1歳7か月の時に次男が生まれ、よく泣く次男を泣き止ませることができないママが自信をなくし、そんなママを見て長男も不安定になっていき、何が足りないのか、泣く日々が続いていたそうです。
『ビジターさんはまっすぐ温かい方でした。甘えたい盛りの長男、声が枯れるまで大泣きする生後2ヶ月の次男。きっと私は思い詰めた表情をしてたと思います。そんな私に、あくまでもホームビジターとしての一線を越えずに無理に声をかけることはなく、部屋がいつも綺麗だとか、子どもが成長しているだとか、また何気ないことを会話だけでなく伝えてくださることが、何に対しても自信をなくした私にとって何よりの助けになったのです』
『最後の訪問の日、頑張りすぎちゃいけないよ、と言ってくださったことで、私に足りないことは頑張り過ぎないことだったのかとストンと納得できました。子どもの成長や私の日々の生活を共感し、認めてもらえたおかげで、人に頼ったって、他でもない私がここまでやってきたんじゃないかと心丈夫になりました』
ホームビジターさんからは、こんなお話がありました。
『回を重ねるごとに、心の内など深いところまでお話くださって感激しました。ご自身が話すことで、ご自身で解決への道を見出していらっしゃることが伺え、とても嬉しく思っていました。お子さんも少しずつ少しずつ心を開いてくれ、会うたびに成長されているご様子が見られ、お会いするのがとても楽しみでした。イマドキの子育て事情もわかり、私もとても勉強になりました。ありがとうございました』
お互いの気持ちが伝わってくる言葉のやりとりに、会場には拍手が広がりました。
記念イベントは後半に入り、淑徳大学総合福祉学部特任教授の柏女霊峰先生が登壇。
子ども子育てと地域社会との関係をどう考えていくか、という点から話し始め、こども家庭庁の設置と改正された児童福祉法の考え方や事業の内容などについて解説しました。さらに、最近の研究では、親の精神的安定や孤立防止が親と子どもの愛着関係を形成し、子どもの成長にとっていかに重要であるかを物語っていて、子育て支援は、何よりも子どもの発達にとって必要なサービスだと話を続けました。
その上で、支援者が支援にあたる際の基本姿勢や注意点について分かりやすくまとめ、話を締めくくりました。
続いて登壇したのは、山本昌子さん。
生後4ヶ月から乳児院、その後、18歳まで児童養護施設で育ち、児童養護施設出身の成人に振袖や袴で写真撮影できる機会を作ることでお祝いするボランティア団体「ACHAプロジェクト」を立ち上げました。虐待された経験者を取材したドキュメンタリー映画や著書を出しています。
山本さんは自分の生い立ちを率直に話し、精神的に辛い時期もあった後、22歳の時に保育の専門学校の先輩が振袖を着せてくれたことがあり、その時に『たくさんの人に支えられて自分は生きてこれたんだな』という実感を持ち、すごく勇気付けられたそうです。
それで、自分と同じように20歳の時に振袖を着られなかった子たちに着せたい、という思いで活動を続けています。
そして、自宅を「まこHOUSE」と名付けて開放する居場所事業など、若者の支援を広げていく中で、「親子まるまる支援」というか、家族全体を支えることの大切さを実感しました。
『映画を撮って、より思ったのは、私たちの虐待で傷ついた心は「治る」ということは難しいんですね。だから私たち当事者がひとつ手に入れた答えとしては、傷つける前に傷つけない環境を作ってほしい、やっぱり傷つく前にできることってもっともっとたくさんあると思っていて、・・・そんな中でホームスタートさんのように、・・・本当だったらお母さん、お父さん、子どもを愛しながらできる方が、苦しい中で自分自身も追い詰められて、子どもも追い詰めてしまう環境要因がとても大きいので、そんなことを解決してくれる第1歩がこの活動だと思っているので、みなさんのご意見も聞きながら一緒に何かしていけたらうれしいなと思っています』
続いて登壇したのは、三井住友フィナンシャルグループ社会的価値創造推進部上席推進役シニア・サステナビリティ・エキスパートの大萱亮子さん。
ホームスタートとの関わりの始まりから話し始め、SMBCグループとして重視する社会貢献の分野や、NPOへの支援の方針などについて説明しました。
さらに最近は、子どもたちの「教育格差」に加えて、「体験格差」の問題を重視しており、具体的な取り組み事例を紹介しました。
イベントの最後は、登壇した3人に、ホームスタート・ジャパンの森田代表が加わり、4人でトークセッション。
柏女先生から、会場の共感を集めた発言がありました。
「親の第一義的責任」という言葉が児童福祉法にも子ども基本法にも入っている。でもそれが過度に親に完全を求め過ぎるということがある。しかし、先日見た児童相談所のマニュアルには、「親の一次的な責任」と社会の公的責任があり、「親が第一義的な責任を持つ」ということとは明確に区別をして書いていました。親ができなければ行政や社会が代わって子育てをしていく、子どもは社会の子であるのが第一で、子育てを親にまずは託すという意味なのに、親が全部やらなければいけないというふうに捉えられてしまっていることが大きな問題ではないか、という趣旨です。
大萱さんからは、企業が入るからこそ資金面や信用力でできることもあり、本当に現場に近いところで活動されているのは団体さんや個人だったりするので、お互い同じ目的のために補完し合って取り組んでいくことがより求められるのではという発言がありました。
山本さんは、何か特別なことをしてほしいというのではなく、「ただ一緒に時間を共有する」そこにすごい力がある、その部分の意識が変われば、それだけで子育て環境が変わっていく、そこはホームスタートの今日の発表でも、改めて大切だと実感したとのことでした。
100人を超える方から参加した感想が届きましたので、一部をご紹介します。
▼利用者の親子とホームビジターの方が登場し、お話しされたのはとても良かったです。ホームスタートって本当に必要とされているし、効き目があるんだなぁと感じたし、温かい気持ちになりました。
▼地元のホームスタートのみんなで視聴できると聞いてみんなで一緒に参加できて楽しかったです。そして全国のホームスタートと繋がることで一体感も感じられてよかったです。
▼有識者・当事者目線での活動者・企業というパネラーを迎えてのトークセッションは、多様な立場からの関わり、連携が求められていることをあらためて認識させられ、非常に有意義であった。
▼柏女先生の「子どもは社会の子」という昔は普通に生活する中で言われていた言葉を聞き、近所付き合いが減っている世の中ではあるけれども、あらためてこの言葉の視点に立ち、地域のお役に立ちたいと思いました。
▼山本昌子さんのお話が特に印象的で、ホームビジターの活動は傷つく前の環境作りに役立っている。虐待は環境要因が大きいから、その活動には意味があって、諦めなくてよい社会をつくる上で重要だというお話は、活動をしている私たちに力を与えてくださるお言葉ばかりでした。
▼企業の参加も良かったです。給料から天引きされるのは税金や年金保険より社会貢献や寄付だと嬉しくて納得感もあります。これからは企業がホームスタートの支援をしていただけると心強いです。